4月13日 岩手県議会 講演 〜過疎地で足りない医療DX〜

2022年4月13日(水)、岩手県議会議事堂で開催された岩手県議会「デジタル社会・DX推進調査特別委員会」の講師として大西一朗の講演がありましたのでご紹介します。参加者は議長含む12名、一般傍聴人が7名。「これが過疎地の医療持続最適解。」と題し、DXにおける医療の課題解決について講演しました。今回の記事では内容を抜粋し、質疑応答の内容と交えてお伝えいたします。

医療DXの課題

過疎地では医療DXが足りていません。私は「医師がいないから診療が行えない」という問題は、対面診療とオンライン診療の使い分け(医療DX)で解決できるという仮説を立てました。医療DXを活用すれば時間と空間の節約ができます。ただし、医療DXに取り組む中で、IT知識不足、資金不足、人的リソース不足、余裕がないことによる困難などが課題として挙げられます。

特にIT知識不足を痛感します。私はIT業界で長く働いてきましたが、基礎を理解すれば、身近な存在になる可能性が高いです。しかし、医療業界におけるIT技術の活用には、まだまだ発展の余地があります。まずは過疎地である八幡平市の課題解決に八幡平市メディテックバレープロジェクトを通じて取り組み、DXを活用した医療の課題解決策を浸透させていきたいと考えています。

医療DXに取り組む八幡平市の現状

過疎地である八幡平市で立ち上げた八幡平市メディテックバレープロジェクトは2年目を迎え、現在は約20名の方に参加いただいています。今後4年以内に八幡平市内約500名の方に参加いただく予定です。このプロジェクトでは遠隔診療を行いながら、AP TECHの技術を活かした見守りを行います。また取得したバイタルデータをもとに、今後は重篤化する前の予防活動に力点を移していきたいと考えています。現在、基本的な設計は終わっているのでN数を増やしています。

私が八幡平市でプロジェクトを進めている理由としては、両親が暮らしていたことと合わせて、八幡平市がIT人材の育成の重要性に早くから気づいて取り組んでいたことも影響しています。八幡平市ではプログラミングを短期間で学べるスパルタキャンプを6年以上前から実施しており、その卒業生を雇うことでDX化の推進に役立つと考えました。実際にAP TECHにはスパルタキャンプの卒業生が4名入社しています。

医療DXは過疎地域の医師不足に伴う課題の解決に役立ちます。しかし、推進にはIT知識、また人材が不可欠です。八幡平市メディテックバレープロジェクトの仕組みは、他地域でも有用です。ただし、プロジェクトを推進していく人材の確保が必須と言えます。AP TECHには医療DXやITに精通した人材が豊富にいるので、今後も人的リソースを活かしてプロジェクトを推進していきます。

なお、遠隔診療、見守り、予防に役立つデータの取得にはAP TECHの遠隔見守りサービス「Hachi」を活用しています。「Hachi」は、後期高齢者の方も簡単に使えるように設計しており、見守られる人はHachiがインストールされたApple Watchを着用していただき普段通り生活していただくだけです。普段の生活のなかで、Hachiがバイタルデータ等を自動で取得します。

スマート診療所の取り組み

スマート診療所は現在はDoctor to patient with nurseで運用しています。電子カルテPC自体はインターネットにアクセスできないことを前提に端末に二要素セキュリティ認証を導入し、看護師の方が医師の指示で代理入力する形にしました。

厚労省のオンライン診療におけるガイドラインにおいて診療報酬の改定が行われ、スマート診療所の取り組みに追い風になっています。

スマート診療所の課題

技術的課題

・電子カルテがインターネットにアクセスできない使用
・診療所WiFiは専用回線ではない

技術以外の課題

・オンライン診療は対面と比較し診療報酬が低い
・患者が対面診療でないことに不安を持つ

技術的な課題に関しては解決が見えています。八幡平市メディテックバレープロジェクトにおいては、専用回線や専用機器を使わずに、基本遅延0で高画質・安価、かつ電子カルテがインターネットを出なくてもいいという意味での堅牢なセキュリティでオンライン診療の実現に成功しています。

ただし、技術以外の課題の方が問題です。解決のためには、オンライン診療に抵抗がある医師・患者それぞれが利便性を理解し、オンライン診療に前向きに取り組むマインドセットが必要となります。私は、実際にオンライン診療を体験することで、不信感や不安感の払拭につながると八幡平市メディテックバレープロジェクトを通じて実感しています

また、医療DXに取り組むことは医師、患者だけではなく患者の家族にも有効です。Hachiを活用すれば遠隔の見守りが可能であり、簡単に安否確認ができます。八幡平市メディテックバレープロジェクトでは、オンライン診療・見守りなどの利点を理解していだけるように、わかりやすい言葉で定期的な勉強会を実施しており、徐々に医療DXに対する理解が進んでおります。

今後の展望

  • 脳卒中発症予測AIの開発
  • 対面診療維持が困難な医療機関のDXサポート
  • 取得データの日常活用

私自身が脳卒中を経験したこともあり、発症前のバイタルが乱れや環境データなどを含めたデータをAI解析して脳卒中発症予測AIの開発を行いたいと考えています。

また、対面診療維持が困難な医療機関のDXサポートに関しては、我々のノウハウを活かしたサービスを今後さらに広い地域で提供していきたいです。すでに数百人の方のバイタルデータがサーバーに蓄積されていますので、オンライン診療等に活かしていきます。その他のプロジェクトとして、取得データの日常活用、携帯電話圏外地域のドローン活用等の事業なども行っていることを簡単に紹介させていただきこの講演を終了させたいと思います。本日はご清聴ありがとうございました。

質疑応答

神崎委員
●高齢者の方も含め、一般の方がApple WatchにHachiをダウンロードして利用することは可能か?
回答(大西):可能です。個人販売もしております。

●Apple Watch以外のデバイスで使えるものはあるか?データとしてどの程度認められているか?
回答(大西):他デバイスでバイタルデータがとれる可能性はあると思いますが、Apple Watchが一番高性能です。医療機器承認されたアプリがある唯一のスマートウォッチであり世界的に評価されています。ただし、診察そのものは医師が行います。データの信頼性に関して疑義を唱える人はいないと個人的には思われます。

●スマート診療所の体制で診療報酬は算定出来るのか?
回答(大西):診療報酬は規定に則って算定しております。なお、今回の改定で上がりました。

小林議員
●脳卒中発症予測AIはぜひ岩手から発信したいが、どのように開発する予定か?
回答(大西):まず医師の協力を得て脳卒中リスクの高い方にApple Watchをつけていただきデータを取ります。その上で医師の協力のもと取得したデータのAI解析を行い開発していく予定です。母数は岩手で3000、他県も含め5000程度を想定しています。集めたデータをパターン化し、クラスタリングして発症前のバイタルが乱れ等を検知し、検証しながら精度を高めていきたいと考えています。

質疑応答含めて2時間、熱心に聞いていただきありがとうございます。弊社がご提供しているHachiや八幡平市メディテックバレープロジェクトの詳細に関しては、下記をご覧ください。